[みなとみらい 横浜美術館]横浜生まれの“日本画の革命児”今村紫紅展6/28(日)まで
横浜美術館
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横浜美術館では、2026年4月25日(土)から6月28日(日)まで「没後110年 日本画の革命児 今村紫紅」展が開催中です。
横浜出身の今村紫紅(いまむらしこう)は、明治末から大正初期にかけて活躍し、わずか35年の生涯で日本画の表現を大きく揺さぶった“革命児”。今回の展覧会は、42年ぶりとなる大規模な回顧展で、公立美術館では初の開催です。
国指定重要文化財をはじめ代表作が一堂に会し、初公開作品も並ぶ、紫紅の創作の軌跡をたどる貴重な機会となっています。
思い切った構図や明るい色彩など、従来の日本画の枠を超えた紫紅の表現は、今見ても驚くほど新鮮。“見たことのない紫紅”に出会える展覧会として、美術ファンはもちろん、横浜観光の途中に立ち寄るのにもおすすめです。
今回は、展覧会の見どころをわかりやすくご紹介します。
◆今村紫紅とは? 横浜が生んだ日本画の革命児
今村紫紅(1880年–1916年)は、横浜生まれの日本画家です。
横浜港の開港(1859年)から間もない時代に育ち、若くして日本画の世界へ進みました。伝統的なやまと絵を基礎から学び、早くから歴史画で高い技量を示したことで知られています。
一方で、古典を徹底的に研究しながらも、既存の枠にとらわれない大胆な表現を追求した点が紫紅の大きな特徴です。その革新的な姿勢は、異文化を受け入れて発展してきた横浜という土地柄とも重なるようです。
後に、横浜の実業家として知られる原三溪(はらさんけい)に才能を見出されたことで、紫紅の創作活動はさらに広がりを見せました。
今回の展覧会では、短い生涯ながら日本画に新風を吹き込んだ紫紅の軌跡を、総合的に知ることができる貴重な機会です。

◆見どころ① 国指定重要文化財や初公開作品を数多く含む約200点が集結
今回の展覧会の最大の魅力は、国指定重要文化財「熱国之巻」「近江八景」を含む約200点が一堂に会している点です。
初公開となる作品が約40点含まれており、“これまで見たことのない紫紅”に出会える貴重な機会となっています。
なかでも注目したいのが、代表作のひとつ「熱国之巻」です。
紫紅がインドを旅した際に受けた強烈な印象をもとに描かれた作品で、異国情緒あふれる題材や明るい色づかいが特徴的です。
点描を取り入れた表現や、冒険心に満ちた構図からは、紫紅が新しい日本画を切り開こうとする意欲が伝わってきます。
画像:
今村紫紅《熱国之巻(朝之巻)》
紙本着色・一巻(図は部分) 大正3年(1914) 45.7×954.5cm
東京国立博物館
※国指定重要文化財 (展示期間:4月25日~5月20日)
※《熱国之巻(暮之巻)》は5月22日~6月3日の展示
Image: TNM Image Archives


◆見どころ② 全4章で追体験する紫紅の人生
展覧会は、紫紅の人生と創作の歩みをたどるように、全4章で構成されています。
最初の展示室では、この4章の内容がダイジェストで紹介されており、展覧会全体の流れを一目でつかむことができます。
また、各所には時代背景や歴史的な出来事をわかりやすく解説したパネルも設置されており、日本画に詳しくない人でも理解しながら鑑賞を進められるつくりになっています。


◇第1章「古画のよい処を分解して、その後を追え!」
古典を徹底的に学んだ修行時代
第1章では、紫紅が日本画家としての基礎を築いた若き日の修行時代が紹介されています。
17歳で上京した紫紅は、歴史画の大家・松本楓湖(ふうこ)に入門し、古典作品の模写や写生に励みました。古画(こが)の魅力を細部まで吸収しつつ、自らの表現を模索していく姿が、この章の大きな見どころです。
展示室には、線の美しさやおおらかさ、新鮮さと親しみが漂う初期作品が並び、紫紅の確かな技量がうかがえます。歴史画への深い関心や、古典を自らの表現へと昇華しようとする姿勢も、この時期からすでに芽生えていたことが感じられます。
その一例が、蹴鞠の名手として「鞠聖(きくせい)」と称された藤原成通を描いた「鞠聖図」です。
古くから繰り返し描かれてきた題材でありながら、紫紅は独自の構図と繊細な筆致で新たな魅力を引き出しています。伝統を踏まえつつも、どこか新鮮で親しみやすい、紫紅ならではの歴史画の魅力が、ここに凝縮されています。


◇第2章「絵画は矢張(ヤハリ)多方面に描け!」
三溪との出会いと、表現の広がり
若手画家として頭角を現しはじめた紫紅は、岡倉天心の思想や、横山大観ら先輩画家の制作から大きな刺激を受けました。さらに、俵屋宗達に代表される琳派や、中国の明清時代の古画にも早くから関心を寄せ、表現の幅を積極的に広げていきます。
転機となったのが、文展に出品した「護花鈴」(ごかれい)をきっかけに、横浜の実業家・原三溪の目に留まったことです。三溪の支援を受けたことで、紫紅は創作環境を大きく飛躍させ、より多彩な主題に挑むようになります。
この章では、三溪との出会いをはじめ、紫紅と横浜との深い縁が紹介されています。
三溪園とのつながりにも触れられており、横浜でこの展覧会を見る意義がより実感できる内容です。
※「護花鈴」の展示期間は、2026年4月25日(土)~5月8日(金)です

![甫雪等禅《鸜鵒(叭々鳥)図》[室町時代後期] 今村紫紅《白蓮と叭々鳥(ははちょう)》と見比べてみてください](https://ycvb.yokohama/img_data/FEATUREIMGITEM6168_2.jpg)
URL
◇第3章「自由も、新も我にあり!」
琵琶湖やインドへの旅で新境地を切り開く
三溪の支援を受けて創作に専念できるようになった紫紅は転機となる「近江八景」を発表。琵琶湖周辺を旅して写生した風景をもとに描かれた作品で、古典にとらわれない明快な色づかいと自由な構図が印象的です。
さらに、新しい表現を求めた紫紅は、病み上がりにもかかわらずインドへ渡航します。旅の光景を絵巻にまとめた各約10m二巻にも及ぶ「熱国之巻」は、日本画の枠を超える実験的な作品で、その色彩や伸びやかな構図から、旅を通じて高まった紫紅の“冒険心”が伝わってきます。
この章では、常に新しさを求め、自らの表現を切り開こうとした紫紅の挑戦が紹介されています。
※「熱国之巻(朝之巻)」の展示期間は、2026年4月25日(土)~5月20日(水)です
※「熱国之巻(暮之巻)」の展示期間は、2026年5月22日(金)~6月3日(水)です
※「近江八景」の展示期間は、2026年6月5日(金)~6月28日(日)です

◇第4章「暢気(ノンキ)に描け!」
紫紅が遺したのびやかな境地
「春さき」は、紫紅が35歳で亡くなる1916年に描いた最晩年の作品です。
穏やかな春の情景を素朴に描きながらも、伝統的な技法を生かして新たな風景表現を生み出している点が大きな魅力です。
晩年の紫紅が思い描いた“理想郷”のような世界が広がり、親しみやすさと高い芸術性が見事に調和しています。
作品を眺めていると、紫紅が最後に見つめていた風景が静かに浮かび上がってくるようです。
紫紅の死後も、その理想は残された作品の中で力強く息づき続けています。本章を通して、短い生涯の中で紫紅が到達した表現の深みと、作品に宿る静かな情熱を感じ取ることができます。

◆見どころ③ 横浜出身の俳優・向井理さんによる音声ガイド
音声ガイドは、横浜出身の俳優・向井理さんが担当しています。
落ち着いた語り口で、作品の見どころや歴史的背景、そして紫紅の人生が丁寧に紹介されているので、日本画にあまり馴染みのない方でも理解が深まり、鑑賞がぐっと楽しくなります。
展示を巡りながら、向井さんの声に導かれて紫紅の世界へ自然と入り込めるのも、この展覧会ならではの魅力です。
普段は音声ガイドを利用しない方も、今回はぜひ試してみてください。向井さんの語りが作品の魅力をより引き出し、紫紅の作品がいっそう身近に感じられるはずです。

◆まとめ
横浜美術館は、みなとみらいの中心に位置し、アクセスの良さも魅力のひとつです。丹下健三による名建築としても知られ、館内外には思わず写真を撮りたくなるスポットが点在しています。
2024年のリニューアル後は、壁面に据えつけのウォールケースに低反射ガラスが導入され、映り込みが大幅に軽減。日本画をより鮮明に楽しめる環境が整っています。
そんな特別な空間で開催される今村紫紅展は、横浜生まれの画家の魅力を“生誕地で味わえる”貴重な機会です。
美術ファンはもちろん、「横浜観光のついでにアートも楽しみたい」「みなとみらいでゆっくり過ごしたい」という方にもぴったりです。
横浜という舞台で、紫紅の世界にじっくり浸ってみてはいかがでしょうか。

URL
【開催概要】
展覧会:「没後110年 日本画の革命児 今村紫紅」
会 期:2026年4月25日(土) ~ 6月28日(日)
休館日:木曜日
時 間:10:00~18:00(入館は閉館の30分前まで)
観覧料:一般 2,200円/大学生1,600円/中学・高校生1,000円/小学生以下無料
※音声ガイドの貸出料金1台650円
<お問い合わせ>
横浜美術館 045-221-0300(代表)
URL
港ヨコハマに流れ着いた引っ越し多めのバガボンド。
MBTI診断は冒険家型。趣味は旅行(建築探訪、史跡巡り)、数独、野球、相撲、洋画、洋楽。
好きな横浜スポットは、ナイターに浮かび上がる横浜スタジアム、街中のオアシス元町公園水泳場。
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