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YOKOHAMA MAP

キュレーターも知らないアートと知

ノスタルジーを超えた何かに出会える場所。
「ブリキのおもちゃ」こそ、
現代アートとして再発見されるべきでないか。

ブリキといえばチープな素材の代名詞。薄い鉄板に錫(スズ)をメッキしたもので、美しく、腐食に強いため缶詰などによく使われた。戦後の占領期から高度成長の直前までの期間、日本で作られたオモチャの大半はブリキ製だった。輸出産業がひ弱だった日本にとって、加工しやすく、低コストで作れるブリキのおもちゃは輸出品としても貴重だったのである。日本が本格的な工業力を持つようになったときブームは過ぎ去り、ブリキのおもちゃは過去の遺物であるかのようになった。しかし、現代アートとは、しばしば顧みられないものの美の再発見・再定義から始まる。陶製の便器に「泉」と名づけたデュシャン。大量に読み捨てられるコミックに注目したリキテンシュタイン。地下鉄のグラフィティとして描かれたキース・ヘリングの作品を見ればいい。さらに現代のバンクシーなどの例をあげれば事足りよう。そうした視点で見れば、ブリキのおもちゃとは、まさに造形、着色、時代性などの点において現代アートとして注目するにふさわしい。山手にある「ブリキのおもちゃ博物館」に収められた過剰ともいえるコレクションの前に立つ人は、ノスタルジーを超えた何かに出会うだろう。それこそが現代アートと通底する「時代の精神」なのではないだろうか。

ブリキのおもちゃ博物館

横浜市中区山手町239/TEL:045-621-8710
開館時間 / 9:30~18:00※(全日11:00~16:00)
料金/大人200円/小・中学生100円
みなとみらい線「元町中華街」駅6番出口から徒歩約8分
JR京浜東北・根岸線「石川町駅」より徒歩約15分
※掲載日:2021年6月1日現在、感染症予防対策のため短縮営業しています http://www.toysclub.co.jp/

ネットでは出会えないリアルな「知のプラットホーム」がここにある。
野毛の古本屋、天保堂刈部書店。

古本を愛好する人々のあいだで使われる符牒に「白っぽい」とか「黒っぽい」といういいかたがある。白っぽいというのは、比較的新しい本が多い店の様子をいい、黒っぽいとは、その逆。古くて資料価値の高い本が多く、稀覯書などが入り交じっている店の様子をいう。その白黒でいえば、大正5年に野毛に創業された天保堂刈部書店は、まちがいなく「黒っぽい」古書店だろう。訪れる客は、横浜国大や市立大などの学生から作家までさまざま。棚も文学一般から学術的な著作まで多様だが、ご主人に聞くと、店としては郷土史の棚をとくに充実させているという。幕末から明治にかけて激動の時代の舞台でもあった横浜という土地は、さぞや奥行きのある郷土史を多数生み出しているにちがいない。ネットも便利だけどさ。古書店をもっと知のプラットフォームとして生かしてほしいね、とはご主人の弁。これこそあらゆる知の求めに応えようとする横浜の古書店の矜持というものだろう。

天保堂苅部書店

横浜市中区野毛町3-134
TEL:045-231-4719
http://www.h2.dion.ne.jp/~nikko-do/

狭い店内の品ぞろえは狭小なる大宇宙のごとく。
そこに横溢する熱いマニア魂に人は揺り動かされてしまう。

おや、こんなところにと思わず足を止めてしまう伊勢佐木町の片隅にあるのがカッコク堂。足を止めてしまうのは立地のせいばかりでない。まるで額縁のような店の窓から、カッコク堂の世界観が目に飛び込んでくるからなのだ。絵はがき、豆本、フィギュア、ブロマイド、メンコといったの雑多な古物が、不思議な統一感をもって迫ってくるとき、足を止めずに立ち去れる人がいるだろうか。一歩狭い店内に足を踏み入れてみれば、そこはまさに狭小なる大宇宙というべきか。探していた立川文庫があるかと思えば、いまをおいては絶対に手に入れられないと確信させるレアもののオモチャに、まるで突然の事故のように出会ってしまうのだ。古本好きはもちろんのこと、フィギュア好き、映画ポスター好きなどは狂喜乱舞してしまうこと必定である。12年前にオープンしたとき、世の古本マニアを瞠目させたカッコク堂ならではの熱いマニア魂は、いまも変わらず健在なのだ。

カッコク堂

横浜市中区伊勢佐木町1-4-8中村ビル1F
TEL:045-243-3252

訪れるべき古書店はまだまだある。
散策を楽しみながら探訪していただきたい。

誠文堂書店

神奈川県横浜市中区南仲通5-57ルネ横浜馬車道2F
TEL:045-663-9587
http://www.seibundobooks.com/


紅葉堂長倉書店

神奈川県横浜市中区曙町4-56
TEL:045-262-1191

認定されたものがアートなのではない。
発見するものがアートなのである。

横浜美術館やトリエンナーレといった美術は、いわば現代アートのメインストリーム。だが、それだけではない、プリミティブなアートの面白さが横浜には満ちあふれている。たとえばマンホールのふた。その意匠は実に多彩で、しかも港町ヨコハマにふさわしい秀逸なデザインのものが多いのだ。それというのも、横浜は、実は日本最初の近代水道を整えた街であるためで、明治時代に英国人技師H.S.パーマーによっていち早く整備された水道であるがために、そのマンホールのふたも多彩を誇るというもの。なにも美術館で展示されているものだけが作品なのではない。地表には毎日鑑賞できるアートがあふれているのである。あるいはキング、クイーン、ジャックと呼び慣わされる横浜三塔をみるがいい。キングこと神奈川県庁の建物は昭和初期に流行した帝冠様式の美を誇り、クイーンこと横浜税関はイスラム寺院を思わせるエキゾチックなシルエットを持つ。ジャックもいずれ劣らぬ様式の美だ。ことほどさように、横浜はアートに彩られている街なのだ。まこと、具眼の士が訪れ、楽しむにふさわしい。

アートなマンホールが見つけられる場所

● 港の風景(港湾局)・・・横浜市中区 大桟橋周辺

● 水道局キャラクター「かばのだいちゃん」(旧デザイン)・・・横浜市中区 元町周辺

● マリノスくん・・・新横浜〜日産スタジアム

● 箱根駅伝(東海道)・・・横浜市戸塚区 JR戸塚駅周辺

● ロコサトシさんデザイン・・・横浜市中区 野毛仲道

● 日本丸・・・横浜市中区 みなとみらい周辺
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